로그인ゴーレムを倒し終えると、ノーファンの村へと二人は転移した。
辺りには木造りの民家が立ち並んでいる。遠くを見ると森や山があった。地面は土。その道路で、トウマとウミは隣り合って佇んでいた。
「普通の村だな」
「そのようですね」
「とりあえず、狩り場に行くついでに、村を見て回ってみるか」
「はぁい!」
二人で並んで歩き出す。
すぐに他プレイヤーの姿があった。
横切っていく通行人。その顔色は明らかに沈んでいた。他にも座り込んでいる女性がいた。壁にもたれかかっている男。空を見上げている魔法使いふう。誰もが死んだ魚のような目をしている。
異変に気づいたウミが声をひそめてつぶやく。不安に揺れる瞳。首をかしげている。
「何か、変じゃないですか?」
「そうか? 普通だろ」
「普通じゃないですぅ。みんな、元気が無いと思います」
「多分、金が無いんだろうな」
道具屋の前を通りかかると、男性プレイヤーとNPCの店員が押し問答をしている声があった。男性プレイヤーは掴みかかるような物腰であり。
「この聖なる石ころは、さっきモンスターからドロップした物で!」
「はい。売価は3ヴァルになります」
「3ヴァルだとぉ? あと200ヴァルあれば宿代を払えるんです! どうか、200ヴァルで買ってください」
「それはできません」
「頼む。頼むってえ!」
「できません」
トウマたちは無言でその隣を通過した。
ウミが彼の腕のそでを引く。
「助けなくて良いんですか?」
「助けても稼げん」
「稼げないかもしれませんが、意義はありますよ?」
「それをすると俺が詰む」
歩きながらトウマはステータス画面を開いた。
そこにはログネストの利用料金も表示されている。
「24時間の利用料金、20000ヴァルか」
「何ですかそれ。高すぎですぅ」
「いや、妥当な金額だろうな。だけど、俺たちのヴァルは合わせてまだ600ほどしか無い」
「私のお金を含めるんですか?」
「そりゃあそうだろ。お前は俺の使い魔なんだから」
「ダメですぅ。私のお金は私のです!」
「マジか」
「大マジです!」
ステータス画面を閉じた。それからも歩き続ける。
ふと知らない女性プレイヤーが近づいて来て、トウマに媚びた笑顔を浮かべた。
「お兄さん、私を、買ってくれませんか? 一回一万五千ヴァルでいいですよ」
「用事はない」
無視してさっさと通り過ぎた。
ウミが顔をひどくしかめている。ほっぺたを膨らませてため息をつく。
「トウマ、この世界変ですぅ」
「そうか?」
「でも、トウマの宿代を稼ぐお手伝いはします」
どう見たって小学校高学年くらいの身長しかないウミの頭にポンポンと手を置いた。彼女は嬉しそうに唇の端をつり上げる。スマイルが可愛かった。
「とりあえず、狩りに行くぞ」
「ちょっと待ってください! トウマ、私、お腹空きました」
ウミがその場にしゃがみ込む。両手で腹を押さえていた。
ぐぅーっと間抜けな音が鳴る。
「お腹が空きすぎて、動けないですぅ」
「マジか」
トウマはステータス画面をまた開いて眺める。そこには満腹度が表示されていた。いま80%以下である。下がればHPとMPの自然回復が遅くなる。
「おい、ウミ。ステータスを出してみろ」
「ステータスですか?」
ウミもステータス画面を出す。覗き込むと満腹度が0%だった。
空腹で腹が痛いらしい。
このままでは動けない。
「ウミ、立てるか?」
「……何とか」
ウミが立ち上がる。
「とりあえず、道具屋へ行くぞ」
「ご飯を買ってくれるんですか?」
「仕方無いからな」
「すいません、ご主人様」
二人は来た道を引き返す。
腹が減っては、稼げない。
騎士団兵舎の前の砂地だった。 空からは太陽の紫外線が強烈に降り注いでいる。白い兵舎が眩しく照り返していた。馬屋で世話をしていた騎士たちが何事かと集まってきていた。騎士団長ユクルの後ろには騎士の人だかりができている。ベルフラウと朧月の決闘に注目していた。 乾いた風が吹いていた。ベルフラウのお姫様ドレスの裾がはらはらとなびいている。目の前にいる朧月の着物の裾もひらと揺れた。朧月には暑さデバフがかかっているようで、何もしなくてもHPがほんの少しずつ削れていく。だが酒ひょうたんをあおぐたびにHPは回復していた。どうやら酒には回復効果があるらしい。ベルフラウの後ろを仲間たちが扇状に囲んで見守っていた。 朧月がベルフラウにフレンド申請をした。彼女は承認する。フレンド項目から決闘がスタートされる。:これは見物だな。:ベルお姉様、応援しております!:我らのベル様は砂漠でも輝いておられる。まるで一輪の花のようだ。 緊張感が腹に重くのしかかっていた。(……朧月ってこの女の人、やけに威圧感があるわね) ベルフラウは左手のひらを掲げて唱える。「メイクアップ」 小さな丸い手鏡が生まれて虹色の光を放った。ベルフラウの化粧のノリが上昇すると共にアジリティが上がる。心が落ち着いた。 朧月が酒をごくごくとまた飲んだ。ぷはーと息をする。色っぽい流し目のような視線を送った。「時に、ベルフラウさん。ぬしさん、酒は好きでありんす?」「……お酒? 好きだけど、それがどうかしたの?」「そうかそうか。酒は良いものでありんすねぇ。それなら今度、わちきと一杯やりんしょう」 ベルフラウはやりにくそうに首をかしげた。「貴方、いま私と決闘中よ?」「ああ、そう言えばそうでありんした。では、ぬしさん……どこからでもかかってきなんし」「貴方……やる気あるの?」「ありんす。わちきの儚
ラグナシアの騎士団駐屯地。 砂地の上に騎士たちの兵舎が建ち並んでいる。建物はやはりレンガ造りであり、屋根や壁は白く塗られていた。だだっ広い訓練場ではラクダや馬に乗った騎士たちが槍で戦闘訓練を行っている。歩兵たちも木剣を持って地稽古を行っていた。50mほど離れた的に向かって矢を放つ弓兵。正確に射貫く腕前は壮観である。馬屋ではラクダと馬が水を飲んでいる光景があった。世話係の騎士が「水は貴重なんだから大切に飲めよ」と声をかける。ラクダは「グォォー」と不満そうな鳴き声を響かせていた。がぶがぶと水を飲んでいる。ここにも水不足は深刻な影響を及ぼしているようだ。 騎士につれられてトウマたちがやってくると、兵舎前では諍いが起こっていた。二人の人間が戦っている。片方はすらりと背が高く金髪碧眼だった。白い騎士服の袖には黄金の三本線が入っている。胸元にはラクダ柄の刺繍。風格からしておそらく騎士団長だ。 もう片方の女はこの砂漠に全くそぐわなかった。和風の打ち掛けの着物であり、胸元と肩が大きく露出している。大ぶりの胸に色香が漂っていた。伊達兵庫髷の黒髪にはお団子のかんざしが刺さっている。肌はおしろいが塗られたように真っ白だった。まるで花魁である。長いキセルの武器を巧みに振り回し、騎士団長に襲いかかっている。その左手には酒ひょうたんが握られており、戦いながらごくごくと飲んでいる。白い頬がほんのりと赤く染まっていた。 二人のHPMPバーを見る。 騎士団長の名前はユクル、NPCだ。 花魁姿の女の名前は朧月、プレイヤーである。:おい、遊女がいるぞw:どうしてこんなところに花魁がいるの?:この人見たことある! キセルと剣が衝突して鈍い音が立つ。 朧月が甲高い声を震わせる。「おーほっほっほ。弱い、弱いでありんすー。ぬしさんの剣はカメのようにのろいでござりんす。ほれほれ、このままわちきが殺しなんすぅ」「もうやめろ! 俺は戦う気などない!」「では、わちきと枕を交わしておくんなし。それが叶わぬのなら、今すぐ殺しんす」
製菓できるアイスクリームは三種類だった。 そのうちの一つ、アイスポーションキャンディをベルフラウがダンスで量産してくれた。 Sランクアイスポーションキャンディの効果。 HP回復(大)。暑さ無効。暑さデバフ無効。快適度上昇(大)。効果時間、2時間。(画期的すぎる) トウマはペロペロと舐めていた。身体に染み入る美味さだ。若干薬臭いのは仕方ないだろう。:アイスキャンディはずるいw:ポーション味ってそれ美味しいの?:美味しさよりも涼しさじゃないか? 余談だが、これまでの三週間の間に、ギルドメンバー全員がノーファン村で初心者の包丁を獲得している。みんなが料理機能を解放させていた。 小さなオアシスを出発し、みんなで砂漠をまた歩いていた。小さな砂丘を上がったり下ったりした。直射日光がじりじりと照りつけている。だけど暑くない。汗も出てこない。体力をとられることも無かった。アイスの効果が肌を守ってくれている。身体がひんやりと涼しかった。快適である。晴恋とアイギスは相変わらずキャルル丸の背中に乗っていたが、今度は背筋を伸ばしていた。歩行スピードは上がっており、砂地をさくさくと踏みしめている。みんながアイスを舐めている。ウミがふんふんと鼻歌を歌っていた。「ふんふんふーん、もう暑くありませんよー」「助かったわ、ウミちゃん」 ベルフラウが微笑して金髪のボブカットを揺らす。アイスをかじってぽりぽりとかみ砕いた。 ウミは得意げに胸を張った。「猫は役に立つですぅ」「本当ね。偉いわ」「これからもどんどん良い行いをするですぅ」「うんうん」「きゃるるぅっ」 キャルル丸がつぶらな瞳を細めてアイスをバリバリと頬張っている。尻尾が嬉しそうに振動していた。 それからも数十分ほど歩いた。 遠くに町の影が見えてくる。広い穴をナツメヤシがぐるっと囲んでいる。その周囲には日干しレンガで出来た家々がたくさん建っていた。背の高い教会があり、つるされている銀色の鐘がテカテカと輝いている。鐘の上にはサバクヒタキの鳥がちょこんと乗っかっていた。:ラグナシアの町へようこそw:結婚式場がありますよ!:エロいナイトダンスバーもあるぞw どうやら次の町に着いたようだ。 だがトウマは眉をひそめた。(あの広い穴は、オアシスじゃないのか?) 周囲にナツメヤシが立っていることからして、
荷馬車とはすでに別れを告げていた。 砂漠を歩いていた。 聞こえるのは砂を踏みしめる音と乾いた風の音だけである。 先ほどまで周りにあった木々や草は、後方の彼方へすっかりと消えている。地平線まで砂の大地が広がっていた。強烈な日差しを砂地が照り返している。身体が焦げてしまいそうだ。汗がどんどんと噴き出てくる。喉はとめどなく渇き、事前に持って来ていたジュースをみんなが飲み干していた。砂漠のフィールドは暑さデバフがかかるようで、みんなのHPがじりじりと減少していた。メンバーにヒーラーはいない。そのためポーションを飲んで回復していた。用意周到なベルフラウがポーションを多く買い込んで来ていてくれていた。こういうところ、この恋人は本当に抜け目がない。仲間のHPが少なくなる度に配っている。だけどポーションの液体がぬるい。トウマはひんやりと冷えた麦茶が飲みたい気分だった。砂地に足を取られつつも、みんなで歩をゆっくりと進め続ける。 キャルル丸だけは日差しに強いようで平気そうな顔をしていた。その背中にアイギスと晴恋がまたがっている。この二人はもうダウンしそうなほどにへろへろだった。アイギスは無言、晴恋は「次の町はまだですか?」と何度もつぶやいている。:みんな暑そう。:ニキさん、涼しくなるようなジョークを言ってくれw:キャルル丸だけは余裕なんだな。 先頭ではベルフラウが地図を広げており、方位磁石で方角を確かめていた。その隣をウミが並んで歩いている。ウミがぐったりとした声でつぶやいた。「師匠、正面の空間がゆらゆらと揺れているですぅ」「あら本当……蜃気楼ね」「蜃気楼って何ですかぁ?」「上空と地上に温度差があると、光が屈折して景色が曲がるのよ」「はうぅぅ、私、自分の目がおかしくなったと思ったですぅ」「大丈夫よウミちゃん。あたしも同じだから」「師匠、ちょっと休憩したいですぅ」「ダメよウミちゃん、こんなところで休めないわ」 ベルフラウとウミのすぐ後ろにはトウマとニキがいる。
翌日。今日は給料日だった。 一週間に一度、領地からの税収の分配をトウマからもらう日である。 ウミはウキウキとしていた。(あうぅぅ、いっぱい欲しいですぅ) みんなで荷馬車の荷台に乗っていた。目指すは次の町である。乾燥した土の道路を、荷馬車がガタンゴトンと音を立てて進んでいく。オリーブやユーカリなどの硬葉樹林がところどころに背を伸ばしている。遠くではお腹のふくろに子供を入れた動物が飛び跳ねていた。ベルフラウが「カンガルーだわ」と言ってステータス画面を出す。カメラ機能で撮影をしている。晴恋も同じようにした。カンガルーの耳はウミのそれよりも長い。毛色は茶である。二本足で立つ姿は、どことなくキャルル丸に似ていた。(あうぅ、可愛いですぅ) 次の町は砂漠のど真ん中という話だった。行くのが楽しみで仕方無い。砂漠とはどんなところだろうか? トウマの話によると、ひたすらに砂地が広がっているらしい。昼は暑く、夜はとても冷えるようだ。新たな景色に胸が高鳴る。だけど、自分の水着姿で大丈夫だろうか? ちょっとだけ心配だった。 配信ドローンが外から追いかけて来ている。視聴者はいるようだが、コメントは少なかった。 荷台にあぐらをかいているトウマがステータス画面から銭袋を取り出す。そして声をかけた。「みんな、税収を分けるから、一人ずつ取りに来てくれ」「ダーリン、今回はいくらなの?」 ベルフラウが撮影をやめて振り向いた。ニコッと微笑をこぼしつつ床に座る。 トウマは口角を上げた。「もらってからのお楽しみだな」「ちょっと、いじわるしないでよ。教えなさい」 ベルフラウが四つん這いで床を進み、トウマから銭袋をもらう。ステータス画面で鑑定した。「あら、多いわね!」「私も欲しいですぅ」「僕も」「きゃるるぅっ」「俺っちももらうさ」「私もいただきます」 みんなが順番に分配をもら
あれから三週間が経過していた。 ユウマと真帆はいま、アパートの内覧に来ていた。 六月の湿気はむしむしとしている。外では大粒の雨が降っており、車道を走行している車が水しぶきを立てて走っていた。ワイパーが勢いよく動いていた。歩道を歩く男子高生が傘を盾にして水しぶきを防ぐ。迷惑そうに眉をひそめている。歩道の隣にはちょうど幼稚園があり、アジサイが茂っていた。ピンクや青の花が綺麗である。葉っぱにはカタツムリがくっついており、ほんのわずかに前進していた。ユウマはアジサイが大好きだった。花持ちが良い花だからである。一ヶ月以上は咲いているはずだ。おかげで景色を長く楽しめる。幼稚園のグラウンドには大きな水たまりができている。水たまりは雨に打たれるたびに波紋を作っていた。 不動産屋の女性スタッフが内覧を案内してくれていた。いま見ている部屋は、1DKと部屋数が少ない。だがルームは12畳であり広々としている。風呂場とトイレは分かれていた。築年数は35年とちょっと古いが、外観も内装も綺麗だ。床はフローリング。エアコンは比較的新しいものが備えられている。ベランダもある。階数は三。家族での入居が可能だ。そしてログネストまでの距離が近い。徒歩15分だった。静かな住宅街であり、コンビニも近くにある。スーパーもそれほど離れていなかった。 月の家賃は9万円。ヴァルに直せば45万である。手数料を合わせればそれ以上だ。(うーむ) ユウマはうなっていた。(8万5千円なら即決の物件だが……) 東京で暮らすには何かと金がかかる。 女性スタッフがにこやかな笑みを浮かべて窓を開けた。湿気を含んだ外気が入り込んでくる。「お客様、いかがでしょうか? お二人暮らしということなら、絶好の物件だと思いますが」「うわあ、すぐ隣に幼稚園があるのね!」 真帆が窓の下枠に両手をつけて外の景色を眺めた。テンションがかなり高い。肩をウキウキと揺らしていた。 ユウマは女性スタッフに聞いた。「ちょっと、見て回っても良いですか?」「どうぞどうぞ」 ユウマはル
――ヒイラギがノーファン村の領主に任命された その一文は、ログインをしているプレイヤー全員の頭上に表示されたのだった。 ノーファン村のヤマネコ食堂。そこでは小さな宴会が行われていた。 直方体の木造りの室内。木製のテーブルが規則的に並んでいる。古めかしい定食屋といった雰囲気であり、テーブルの上には様々な料理と酒瓶が並んでいる。焼き肉、油淋鶏、鳥の軟骨の串焼き、レバニラ、揚げ豆腐、ウインナー、山盛りフライドポテト、サラダ、他にもたくさん。 壁の掛け時計を見てウミは眉尻を下げた。いま午前八時前。悲しみの吐息をつく。 これから、どうなるのですか? 今頃トウマは、何をしているでしょうか。
ついに邪蛇狩りが始まった。 満天の空の下。山の上の地面の土は硬く、背の低い雑草が絨毯のように生えている。トウマとウミは、大きな岩の後ろに隠れて山頂の様子を見守っていた。今までずっと登山して来たのだ。 ちなみに先ほど夕食を食べた。昼と同じカレーライスである。もう飽きた。 山頂にはキャンプファイヤーが焚かれているようで、その煙がモクモクと上がっている。炎の灯りに照らされて、人々の戦う様子がよく見えた。 邪蛇、グランツエル。そいつは紫色に輝く肌をした大蛇であり、電車一両ぶんほどのサイズがありそうだ。まるで龍のように美しい。右に左にうねって地面を這い、人々に襲いかかる。 人々の先頭にいる
昼食時。 トウマは一度ログアウトをした。狭いマットルームに戻ってくる。毎度のことながら味の選べるログネストラーメンを注文し、割りばしですすって食べた。全ての味をすでに食べ尽くしたせいで、もう飽きてしまった。ちなみに今日の味はミソである。 ベルフラウと会って直接話をしようと思い、隣室の気配を探ってみる。だけど彼女がログアウトしてくる様子は無い。一時間待って、トウマはがっかりと肩を落とす。(真帆は昼食を摂らないのか?) 仕方無く、ゲーム内に再び戻った。 山壁の根元にぽっかりと空いた洞窟。周囲の壁は岩のように硬い。まるで獲物を飲み込むために大口を開けたクジラの口のようだ。これはダンジョン
村の服屋。 そこは宿屋の隣の直方体の建物だった。セルティラン衣服店と書かれた看板がでかでかと出ている。ベルフラウは顔だけ振り返り、口の端に笑みをたたえる。ふふんと笑った。やはり偉そうな態度だ。「うふふん、ここよ」「はいですぅ!」 ウミが元気に右手を上げた。扉を開けて三人で入室する。 こぢんまりとした木造の室内。さぞかし多くの服が飾られているのだろうと思ったのだが、一つも無い。だけど店の奥では何かの作業の音が響いていた。 ベルフラウは迷わずカウンターのそばへと歩み寄る。女性店員に話しかけた。「ふふん、こんにちは」「はい、ここは衣服店です。服の作成をご希望ですか?」「そうよ。